おんだ祭り/生々しく子作りを演じる儀礼

(2018.2.4)

飛鳥坐神社で行われる”おんだ祭り”は、三河の「てんてこ祭」、尾張の「田県祭」、大和江包の「網かけ祭」とともに西日本四大性祭のひとつであるという。



”おんだ”というのは「御田」、つまりこの祭りは田植えに関する豊穣儀礼で、正式名称を「お田植え神事」という。
田植えを儀礼化した御田祭りという祭りは奈良県の各所で開催されており、この飛鳥坐神社で開催されているおんだ祭りもそのひとつなのだが、他のものとは決定的にチガウところがある。

それが既に有名になりつつある、天狗とお多福の公開性行為だ。

なぜ公開子作り、英語で言えばオープンセックス(?)なんぞを祭りでするのかというと、豊穣というのは一般に性行為や性象徴と結びつけられているからなのである。祭りで性行為を演じることで、田に豊かな実りがもたらされるという考えだ。
おんだ祭りは毎年2月の第一日曜日に開催されている。つまり立春の近くの日曜日ということで、豊穣を祈念する春の予祝行事として行われているのである。

そして天狗はその鼻が男根を想起させることから男性器の象徴とされ、一方おかめ・おたふくはその口と膨らんだ頬が女性器的であることから、よくこのふたつはセットで性象徴とされる。

さて、祭りのスタートは14時からだったが、余裕を持って11時には神社に向かった。

ちなみにその前に同じ明日香村にある「マラ石」を見るべく9時のバスに乗ったのだが、その時点でバスにはもう祭り目当ての客が何人も乗っていた。

マラ石。古代の性信仰を感じられる遺物などとよく紹介されるが、そもそも「マラ」なのかどうかも不明。

このおんだ祭りは冒頭にも書いたように奇祭としてかなり全国的に有名なのだが、境内はかなり狭いので、天狗とお多福の性行為をしっかり見たい人は早めに行って場所取りをしなければならないのである。
天狗(おじさんが演じている)とお多福(おじさんが演じている)のセックス見たさにこんなに早くから乗り込むやつら、やべーな(人のこと言えない)。

祭りの前に境内を散策すると、そこかしこに陽石、つまり男根の形をしている(ように見える)石が点在している。



境内で販売されているお守り類も面白く、珍々鈴などという名称からして露骨なものなどもあるので是非チェックされたし。

男根型お守りを買うときに「長さとか太さとか色々あるので選んでください」って言われたのが笑えた。



神社の周りでは天狗や翁がササラ棒と呼ばれる棒を持って徘徊している。

野球少年が一人近づき、「お願いします!」



すると、フルスイングでケツをバシーーン!!


これは尻を叩かれることで厄払いになるというありがたい物なのだが、この写真の躍動感からも分かるように叩き方が本気で容赦ない。
しかもお面がめちゃくちゃ不気味なので、子供が泣き叫び逃げ惑って神社の周りは最早地獄絵図と化していた。

人がごった返してきた14時、とてつもない寒さの中祭りが始まる。


まずは舞が奉納され、厳かに神事が執り行われていく。豊穣儀礼らしく、四種の作物を神前にお供えする。

そのあとは先ほど客の尻を叩いていた翁、天狗そして牛の登場だ。


牛が田を肥やし、田植えの準備をする様が演じられる。


宮司によって田植えが行われたあと、その苗が観客に投げられた。


さて、このあと皆お待ちかねの本番が始まる。

一度引っ込んだ天狗がどこからかお多福を連れて戻ってきた。
そして一人で股間に青竹をあてがい、「元気がないなあ」的な感じの素振りを見せている。


ぐるぐる回したり、四股を踏んだりしているうちにだんだん元気が出てきたらしく、宮司の前に置いてある白米の上に何か(あくまで何かは分からない)をかけるような素振りをしたりし始めた(笑)

そしておもむろにお多福との公開子作りが始まる。


が、しかし何故か観客に見せまいとその前をうろちょろする翁!邪魔だぞ!




邪魔していた翁、最後には二人の子作りをうしろからお手伝い。
正直そのお手伝い、いらないと思うけど…。

それにしても豊作を願う儀礼・祭りにおいて性的な所作が演じられるのは多々あることだが、ここまで生々しいTHE・性行為!といったものは珍しい。それがおんだ祭りが有名たる所以であろう。


フィニッシュした天狗が懐から紙を取り出し、自分とお多福の股間を拭いて終了。
この紙は「拭くの紙」、つまり「福の神」として観客に投げられる。ゲットできた人には子宝の御利益があるのだ。

知人が見事ゲットしたのであとで写真を貰ったのだが、


うん、使用済みのティッシュだね…まあそれで何も間違ってないんだけど…。



最後にお祭りらしく餅投げをして終了。

と、まあ噂に違わずとてつもない奇祭だったわけだが、実は私はかなり拍子抜けしていた。
というのも、メインイベントの天狗とお多福の性行為があまりにアッサリと短時間で終わったから(笑)。まさかの天狗超早漏。
「え、もう終わり!?」という言葉を押さえるのに必死でしたね。

なんでも、過去何度もこの祭りに足を運んでいるという人曰く、今年は今まで見た中で一番「アッサリプレイ」だったそうだ。
天狗とお多福は毎年演じる人が異なるらしく、その年その年で個性が出るんだとか(笑)
う~~ん、折角なら濃厚コッテリプレイが見たかったなあ、残念。まあ毎年違いがあるというのも面白くて何度も見たくなるポイントだと思うので、次回行けるときには是非コッテリ天狗に当たりますように!


ところで、冒頭に記したように、このおんだ祭りは田植えの祭りであり、天狗とお多福の性行為のシーンを除けば類似の祭りは数多く開催されている。特に奈良では2月に各所の神社で行われているようだ。しかしこの祭りだけが上記のようにかなり特殊である。
豊穣と性的な要素が結びつくことは多々あるが、ここまで露骨なものは珍しい。

近くの飛鳥川上坐宇須多伎比売神社でも類似の祭りが明治時代末まで伝承されていたそうだが、既に失われており、またこの祭りの由来については詳しいことは分かっていない。

何故ここ飛鳥坐神社のおんだ祭りだけがこんなに特殊なのだろうか?
以下は推論なのでサラッと読み飛ばしていただければ幸いだが、この飛鳥坐神社は境内の案内版によると「手向けの山」として万葉集に多く歌われてきたという。
この「手向けの山」だが、平安中期に作られた辞書・倭名類聚抄には「太無介乃加美(タムケノカミ)」が「道の神」であると記されている。このタムケノカミは同じく道に関わる信仰があったと考えられる「サヘノカミ」「フナドノカミ」と習合するかたちで現在の道祖神になったと考えられているものだ。
つまり飛鳥から時代は相当下ると思われるが、道の神であるタムケノカミがいるとされた手向けの山は次第に道祖神のいる山という認識に変わっていった可能性がある。
道祖神は言うまでもなく性の要素が非常に強い神だ。数ある御田祭りの中で飛鳥坐神社のおんだ祭りにだけ見られる性的なモチーフは、「タムケノカミ」が単なる道の神から性の神へ変わっていった過程で生まれたものではないだろうか?…と、そんな妄想を抱くのだった。
いずれにせよいつから始まったか分からないというあの種付けパフォーマンスは古代からのものとはいかんせん考えづらく、観客の目を意識して次第に過激化していったのではないかと思われる。


さて、帰り道の参道では、祭りが終わってテンションの上がった天狗たちが朝よりも激しく観客の尻を叩きまくっていた……女子供にも容赦ねえ!!めちゃくちゃ怖い!!



わたしもありがたく叩かれました…逃げようとしたけど許してくれなかった。
すごい勢いで叩かれたので子孫繁栄間違いないですね!!(その前に縁結びの御利益ください^^)

【DATA】
日時:毎年2月第一日曜日、14:00~15:30
住所:奈良県明日香村飛鳥708(飛鳥坐神社)
橿原神宮前駅よりバスに乗車し、飛鳥大仏前で下車すると良い

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